残高だけ見ていると危険は見えない—4年前の失敗に似た相場をバックテストで再現した
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著者:PON
当時に近い
トラップ型EAを、2020〜2021年の
ドル円で
100万円から回し直しました。
残高は約
183万円まで増え続けたのに、
含み損を引いた
有効証拠金は2021年1月の約168万円を山に減り続け、2021年11月24日に
強制ロスカットになりました。残高だけ見ていると、最後の直前まで「稼げている」ようにしか見えませんでした。
この記事を書いた背景
私は4年前の2022年9月、自作のトラップ型EAで口座をほぼ失いました。そのいきさつは自作トラップ型EAで300万→1,000万超、1週間の円安でほぼ全ロストした話に書いています。
2026年にEAを作り直す前に、あのとき口座の中で何が起きていたのかを数字で見直したいと思いました。そこで、MT5のストラテジーテスター(過去の値動きでEAを動かして確かめる機能)を使い、似た相場で当時に近いしくみを動かしてみました。
回した条件は次のとおりです。当時の私のEAそのものではなく、「当時に近いしくみ」です。
- 期間:2020年1月〜2021年12月(ゆっくりした円安が続いた時期)
- 資金:100万円、1回の売りは0.05ロット
- 値段が20pips上がるごとに売り、20pips下がったら利確
- 持てる札は40枚まで。含み損が残高の50%を超えたら、新しい売りを止める
残高は増え続け、有効証拠金は減り続けた
結果をグラフにすると、2本の線がまったく違う動きをしていました。
図1 再現テストの残高と有効証拠金(MT5のストラテジーテスターの約定記録と、ドル円の日足から計算したおおよその値)
残高(緑)は、2020年3月の乱高下で利確が一気に増え、その後もほとんど減らずに右肩上がりで増えていきました。2021年9月には約183万円、元手の1.8倍です。
ところが有効証拠金(赤)は、2021年1月5日の約168万円が山でした。そこから下がり続け、2021年11月16日には、残高が約183万円あるのに有効証拠金は約16万円しか残っていませんでした。そして11月24日、115.48円で強制ロスカットになり、口座はほぼゼロになりました。
実は2020年3月24日にも、残高が約136万円に増えていた同じ日に、有効証拠金は約36万円まで落ちていました。このときは相場がたまたま戻ったので助かっただけです。
このグラフを見たとき、天狗になっていたのが一気に落ちた当時のチャートにそっくりだと感じました。
裏で、売りの札が積み上がっていた
残高と有効証拠金の差は、持っている札の含み損です。札の数を並べると、何が起きていたかがよく分かります。
図2 再現テストで持っていた売りの札の数(日ごと)
2021年に入ると、ドル円は1月の約103円から11月の約115円まで、ゆっくり上がり続けました。売りのトラップは上がるたびに売るので、利確されない札が増えていきます。1月初めに7枚だった札は、3月末には36枚になり、そのあとは上限の40枚近くに張り付いたままでした。
その間も、少し下がるたびに一部の札が利確されるので、残高は増え続けます。3月末の時点で、残高は約175万円に増えていたのに、有効証拠金は約83万円でした。毎日残高だけを見ていたら、この差には気づけません。
なぜ見えなかったのか:含み損を「残高」で割っていた
もう1つの弱点は、止めるしくみの物差しでした。このテストでは「含み損が残高の50%を超えたら、新しい売りを止める」にしていました。残高が増えるほど、止めるまでに我慢する含み損も大きくなってしまいます。
図3 新しい売りを止める含み損の額。残高で割ると、稼ぐほど止まりにくくなる
始めたときの残高100万円なら、含み損50万円で止まります。ところが残高が183万円に増えると、91.5万円まで止まりません。勝っている間に、知らないうちにブレーキが甘くなっていく形です。当時の私が「調子に乗ってロットを大きくした」のと同じことを、しくみの側でもやっていたことになります。
作り直したEAで変えたこと
この再現から、作り直したEAでは次のようにしました。
- 含み損の割合は、増えたり減ったりする残高ではなく、最初に入れた元本で割る
- 有効証拠金が元本の30%まで減ったら、すべて整理して止まる。自動では再開せず、続けるかは自分で決める
- 毎朝7時に届く通知で、残高だけでなく有効証拠金と札の数を見る
どれも「残高が増えていても安心しない」ための決め事です。これは私がこう決めたという記録で、この形で勝てると約束するものではありません。
まとめ
4年前の失敗に似た相場を再現すると、残高は約183万円まで増え続けたのに、有効証拠金は減り続けて強制ロスカットになりました。残高は「これまで利確した分」、有効証拠金は「今やめたら残る分」です。私は当時、増えていく前者ばかりを見ていました。
今は、残高よりも先に、有効証拠金と札の数を見るようにしています。
よくある質問
残高と有効証拠金は、何が違うのですか?
残高は、決済が済んだ取引の損益だけを足した金額です。有効証拠金は、そこから今持っている札の含み損(または含み益)を足し引きした金額で、今すべて決済したらいくら残るかに近い数字です。トラップ型は利確した分だけ残高が増えるので、含み損が膨らんでいても残高は増え続けることがあります。
残高が増え続けていたのに、なぜ口座がなくなったのですか?
利確で残高が増える一方で、利確されない売りの札が積み上がり、その含み損が有効証拠金を削っていたからです。再現テストでは、2021年11月16日に残高は約183万円あったのに、有効証拠金は約16万円しか残っておらず、その後の円安で強制ロスカットになりました。
今回作り直したEAでは、何を変えましたか?
含み損の割合を、増えたり減ったりする残高ではなく、最初に入れた元本で割るようにしました。元本の30%まで減ったらすべて整理して止まり、続けるかは自分で決めます。毎朝届く通知でも、残高だけでなく有効証拠金と札の数を見ています。これは私がこう決めたという記録で、成績を約束するものではありません。